ムービープラスで、トマス・ロブサーム/アスラーグ・ホルム監督「a-ha THE MOVIE」。 「Take On Me」などのヒット曲で知られる音楽グループa-haのドキュメンタリー。 A-haに関しては、それほど深く追っていたわけではなく、ヒット曲を数曲知っている程度であったが、この映画はなかなか面白かった。 形式としては、現在の(映画撮影時の)ライヴやレコーディング風景の彼らと、少年時代からのメンバーとグループのバイオグラフィーを振り返るのを交互に見せつつ、a-haというグループを浮き彫りにしていく、と言ったもの。 ドキュメンタリーとしてはありふれた形式だが、この映画ではその形式が見やすく、分かりやすいものになっていたので、音楽ドキュメンタリーとしてオーソドックなものとして楽しむことは出来た。 本気なのか冗談なのか、映画の冒頭でライヴのバックステージで「レコーディングはしないのか」と聞かれたメンバーが、「今やったら殴り合いの喧嘩になる」と答えている場面があって、やっぱりバンドって色々あるよな…と思ったり。 特に世界的な成功を収めた後、その後もグループとしての活動を継続していくとなると、一般の人間には考えられないようなストレスや人間関係のもつれはあるのだろうな、とも。 そして、ありがちな話であるけれども、ヒットを飛ばしてポップスターになった彼らも、アーティスティックな欲求を満たしたい部分と、世間から求められるアイドル的な部分との狭間に苦しんでいた事も語られる。 特に80年代という時代だと、そう言う時代のアイコンとして求められるイメージと、アーティスティックにやりたいこととの乖離と言うのは、現在のポップミュージックを取り巻く状況とは全く違うものだったのだろうし。 映画の中で「Take On Me」が世界的なヒットになるまでが語られていたが、印象的なイントロのフレーズはメンバーが10代の頃に居たバンドの頃から使っていたもので、それを流用したと言うのは知らなかった。 更には、あの徐々に音程を駆け上っていき、最後にファルセットになるサビのメロディーラインに関しても、「サビが弱い」「モートン(ボーカル)のハイトーンを活かしたものがいい」と判断したプロデューサーの支持から生まれたものだと知る。 そして「Take On Me」といえば、あの誰もが記憶に残っているであろうMVだが、あのVTR以前に本国ノルウェーで、いかにもありふれた80年代的なPVで撮られていたものがあったというのも、自分には驚きだった(その映像の断片が映画にも使われていたが、かなり野暮ったくて、これは売れないだろ…というものだったが)。 彼らの少年時代について語るフッテージが、鉛筆画のアニメーションで描かれている場面になって、やはり彼らにとって「Take On Me」のMVはアイコンでありながらも、逆に言えば「呪縛」として深く根付いているな…と思ったりもしたけれども。 特に目新しいものなどない、音楽グループを描いた極めてオーソドックなドキュメンタリーであったが、a-haについて少しでも興味がある人ならば、楽しんでみることが出来るドキュメンタリーであったかな。