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実相寺の世界に浸る(4.16-4.22)

4月16日(日)
母の月命日なので、墓参り。
春っぽい暖かい陽気だったので、霊園までの行き帰りも散歩気分で心地よかった。

墓参りの後で少し横浜をウロウロした後、伊勢佐木町のシネマリンにて、楊德昌(エドワード・ヤン)監督「牯嶺街少年殺人事件」を見る。
20年以上前に4時間版は見た記憶はあるが、殆ど覚えていなかった。最後に少年が少女を刺す場面だけは何故か結構鮮明に覚えていたが。
明確なストーリーがあるというよりも、エピソードの積み重ねが続いて映画が進んでいくスタイルは嫌いではない。
ありきたりな心理描写で「分かりやすく」展開するよりもよっぽど共感できるかもしれない。
思春期の少年の色々とモヤモヤした感情が、様々な出来事の裏側に流れている感覚は、自分にも理解できた。
その皮膚感覚と監督が意図する所とは、ズレがあるとは思うけれども、最後に殺人と言う形で爆発してしまうのも、感覚的には理解できる。
ある部分で狂気とイノセンスは紙一重だと思っている自分には、分かる部分ではある。
もしかすると、そう言う部分がこの映画の一つのテーマでもあるのかもしれないな、と思ったりもしたが。
タイトルバックで、英題の「A Brighter Summer Day」と言うのを見た時、その語感が結構いいな、と思った。


4月17日(月)
先週購入した雑誌「cast」の黒沢健一追悼特集の秀樹のインタビューのみ読む。
L⇔Rの活動を振り返る、なかなか良いインタビューだな、と思って読み進めていたが、最後の最後で涙を我慢できなかった。
そこで語られていたが、L⇔Rの25周年へ向けて、健一と秀樹でデモ作りを始めていたらしい。
もし、健一を病魔が襲わなければ、今年あたりに「新しいL⇔Rの音」が聞けたかもしれないのか。
そう思うと、健一が亡くなったことは本当に残念でならない。


4月18日(火)
ユーロスペースで行われている実相寺昭雄の特集上映へ。
「アリエッタ」
なんと言うか、人間の欲望なんて中身のない空っぽなものだとでも言いたげな作品(作者にその意図があったかは不明)。
ちょっと人物の描写がステレオタイプかなぁ…という気はしたが、人間の「中身の無さ」をこれでもかと突きつける展開は、ある部分で痛快ではある。
オープニングから、殺人現場のシーンで始まるので、犯人探しのミステリーかと思いきや、どちらかと言うと殺害された被害者の人となりを追っていく展開が続く。
少しトーンは違うが、平凡な?主婦が堕ちていく様は、ロマンポルノでも成立するストーリーだよなぁ…と思った。
ただ、35mm版との事だったけれど、ビデオで撮影されたものをフィルムに転写したものなのか、とにかく画面が暗く見づらかった。フィルム自体の劣化も酷かったけど。

「ラ・ヴァルス」は結構面白かった。
最初はレイプ事件を扱った話かと思ったら、容疑者に付いた弁護士が事件のことを調べていくと、色々と被害者とされた女性の裏側が暴かれていって…と言うストーリー。この展開もロマンポルノでも通じる題材だったかな。
単にお金に寄り添う女性という形で表現されていたら単純なんだが、あのラストだとどうもそうとも捉えられない。ただ、空虚に流されて生きていくだけの虚無的な空気を感じてしまった。
「アリエッタ」でもそうだったが、時代がバブルに突き進む中、実相寺昭雄の中に去来していたのは圧倒的な虚無感だったのかな、とも。
弁護士役の寺田農がなかなか良かったな。その他の役者で言うと「アリエッタ」と同じ加賀恵子も出演していたが、こちらの方が断然良かった。

「青い沼の女」はダメダメだったな。
泉鏡花を原作に取ったドラマ(火曜サスペンス劇場)だが、2時間ドラマの安っぽさだけが目につく作品だった。
やたらとセリフが多いし、殆どの場面で悲壮感溢れる?音楽がべったり付けられていて、劇場で見るにはかなりうるさい感じ。
取ってつけたように「実相寺アングル」が登場するが、それも効果があるようにも思えなかったし。
同じプロットでも、ちゃんと35mmで撮った映画だったら、もう少しはマシになってたかな、などと思ってみてしまったが、脚本自体があまり面白くないかな。
山本陽子は結構綺麗でしたが…。あと志麻いづみが胡散臭い霊媒師の役で出てた。


4月19日(水)
本日もユーロスペースにて実相寺昭雄。
「歌麿 夢と知りせば」。作品自体が長く、やや散漫な印象もあったものの、なかなか面白かった。
「女が描けない」と悩む歌麿の姿に(演ずるは岸田森)、一人の芸術家が「本質」に迫ろうとして迫れない姿を感じた部分は多かった。
その「本質」に迫ろうとするも、結局そういう「本質」はこの世にはなく、現世は全て「うつしみ」であると言う事を思ったり。
その後「帝都物語」まで、10年近く映画を監督しなかった(出来なかった?)実相寺を思うと、そのように思い悩む歌麿の姿に、自分を重ね合わせたりしていたのかな?などと思ったりもしたが、どうなんだろう?
江戸幕府の役人やらそこに群がる商売人、そして平幹二朗が演ずる歌舞伎役者(盗人でもある)なども出てきて、色々な側面から江戸時代を描こうとしていた感じはあるが、逆にそれが散漫な印象に繋がった部分はあったかも。
歌麿の苦悩?にフォーカスを絞った方が見やすい作品になったかもな。そっちの方が実相寺美学にも合いそうな気も。
終盤、江戸幕府による取り締まりで浮世絵・歌舞伎が禁止され、成田三樹夫演ずる蔦屋重三郎が幕府の役人に対して「世を乱しているのはあなた達じゃないですか!」と怒りもあらわに訴えかけるシーンがあったが、様々な面で言論統制が忍び寄る雰囲気を感じる今の日本にもリアリティを持って響く場面であった。
中川梨絵が花魁として出演していたが、出演シーンがほんの少しだったのがやや残念。

「宵闇せまれば」
実相寺の映画デビュー作らしいが、習作の域を出ていない感じ。脚本は大島渚。
偶然にコンロのガス管が外れたのをきっかけに、誰が最後まで我慢できるかと言うのを4人の青年が競うのだが、その「誰が最後まで残るのか」というのを観念的に語る部分に、学生運動を重ね合わせているのだろうか?とは思った。
そこで「遊びなのか本気なのか」と話す部分に、特にそう言う側面は感じたかな。
…とは言え、狭いアパートの中で繰り広げられるシチュエーションは、舞台劇っぽく、時折「実相寺アングル」を感じさせるカットなどもあったが、この作品で格段効果があったようにも思えない。
実相寺のフィルモグラフィーで、映画デビュー作と言う肩書きがある以上に、特に見るべき事柄のない作品だったな。


4月20日(木)
本日もユーロスペースの実相寺昭雄特集で「ディアローグ「對話」より 堕落」を見る。
加賀恵子を主演に迎えた3作目。なかなか面白かった。これもロマンポルノっぽいストーリーだな、とも思った。
策略的に結婚した妻と離婚するために、夫がでっち上げた不倫を元に興信所に色々調べさせるが、そこには興信所の裏の側面が加わって、策略にはめられた妻はさらに…と言うようなストーリー。
相変わらず幸薄い雰囲気の加賀恵子が周りに騙されて堕ちていく姿と、夫役の狡猾で無表情な堀内正美との対比、そしてその二人に絡む様々な人達の「表と裏」、これらがどこか金や権力なんて虚しいと言う風にも感じたな。
序盤から騙し騙され、表の顔と裏の顔が色々と交錯するストーリーには、「正しいものなどどこにもない」とでも言いたげな雰囲気も感じ、どこか人が生きていく上での虚無感を表現していたのかな、とも感じた。
もしかすると、加賀恵子を主演に迎えた三作は、そう言う側面が強く出た作品群なのかもしれないな。

その後、同じく渋谷で桃色革命の新メンバーお披露目フリーライヴがあったので、そちらへ。
…と思ってライヴハウスに行ったら、今日お披露目の新メンバーが体調不良で欠席、とのこと。
まぁ、特に新メンバーを期待して行ったワケでもないので、「あぁ、そうか…」というくらいの気持ちで。
イベント自体は楽しく、ゆのん独特なムードメーカーっぷりや、意外とせりちゃんのダンスはしっかりしてるな、なんて感じたりも。
いっちゃんやら、ゆきまるなんかもにも自然と目が行くようになっていた分、まいにゃを見ることが減った気はしなくもないが…。
物販のレギュレーションが分からないというのも大きいが、やはりこのグループとの距離感がつかめない部分もあって、今回も特典会はスルーしてしまった。


4月21日(金)
またもやユーロスペースで実相寺昭雄特集。
本日は「無常」。ATGで監督した第一作。
かなり文学的な作品で、モヤモヤした気持ちにならざるを得なかったが、面白かった。
なによりも、冷静なままで狂っている主人公の田村亮が圧巻だったな。
序盤は姉と弟の近親相姦を描く、単なるアンチモラルな作品かと思ったが、終盤は観念的ではあるものの、宗教や人間生活における善や悪を糾弾する独白があったりで、様々な意味で「人間の善とは?そして悪とは?」と言う問いかけになっていたように思った。
一般的な倫理観から逸脱し、逸脱しているからこそ、そこにある矛盾や欺瞞などを見抜いて、そちらに居る側の人間を責めたてる。
一体、人間における「正しさ」とは何なのか、田村亮演ずる正夫の言葉は、悪魔の囁きのようであるけれども、それに対する僧侶の言葉も嘘や欺瞞に満ちた言葉のように響いてくる。
至極哲学的な問題だとは思うけれども、それを突きつける実相寺の姿勢には共感する部分はある。
もしかして、この作品はニーチェがキリスト教の批判をした事を、仏教を通しての世界で表現しようとした作品なのだろうか?
その解釈が正しいかどうかは別にして、この作品が宗教的なニヒリズムをテーマの一つとして扱った事は間違いではないだろう。
実相寺がATGで監督した、「曼荼羅」「哥」の二本も見たくなったな。


4月22日(土)
なんとなくダルいのもあり、1日家に居る。野球中継とネット配信を見て1日が終わってしまった。

チャーマンズがTIFへの参加をかけて臨んだイベントがあったが、惜しくも決勝で破れ進出はならず。残念。
とは言え、今回のこのイベントのシステムが、公平と言うよりも、よりお金を使って多くの投票権を得たファンが居るチームが有利になる事が垣間見え、なんだかいい気はしなかった。

MOTORWORKSのアルバムの再発を受けて、町田でのトークイベントが決定。
すでに通販で予約済みだが、キャンセルして現場へ向かう?さて、どうする?

by freakbeat | 2017-04-23 01:33 | Comments(0)
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つまらない僕の日常

by あれ
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